『風味絶佳』 山田詠美 文春文庫
谷崎潤一郎賞受賞作。
ときに甘く、ときにほろ苦い、恋と人生の妙味が詰まった小説6粒。
読み終わったあと、なんとなく せつない。
山田詠美、ひさしぶりに読んだけど、やっぱりいいなぁ。
私が好きなのは、以下の3篇。
『風味絶佳』
70歳にして、いつも若いボーイフレンドを助手席に乗せているグランマが言う。
「一日に一度は寂しいと思うことって、人を愛するこつだろう?」
『海の庭』
離婚して実家に戻り、幼馴染と30年ぶりに初恋をやりなおす二人。
40歳を過ぎてからの恋を信じられない娘は
「昔のママが好きなんでしょ? 今のママには興味ないんでしょ?」
作並くんに、そう尋ねるが
「大人が初恋やり直すって、いやらしくて最高だろう?」
と切り返され、気づく。
2人は、子供の純粋さを取り戻そうとしていたのではなく、大人の淫靡さを作り上げようとしていたことに。
『春眠』
以前に恋心を抱いていた同級生の弥生が、自分の父と結婚してしまった。
あれだけ厳格だった父が、若い嫁を、ネコのようにじゃれつかせて
人前でも指をからめて、手をつないでいる。
なんだか納得がいかず苛立ち、亡くなった母に申し訳ない気持ちとで
「今の親父なんて、ただの色ボケじじいじゃないか!!」
噴き出す感情・・・
父は変ってしまったのだ。
しかし、何十年もかけて形作られた人の有りようが、ひとりの女との出会いで変えられてしまうものだろうか。
最後の『春眠』がとても好きです。
とろんと溶けたような、親父の幸せそうな顔が、目に浮かびます。
「好きだ」という想い、その人の前では、なにもかも取っ払って
裸の気持ちになって、愛しいままにふるまえる。。。
甘いキャラメル、私が子供のころは好きでした。
大人になってからは、苦手だったんだけど
また舐めてみたくなりました(*´ω`*)
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この記事へのコメント
ハラケン
のりたまさんの性格、内面がなんとなく解ります^^
私、小説読んで、自分の人生とかぶさり・・泣んですよ^^;;
のりたま
おぉ!!!
ブログ、再開されたのですね!!
また、遊びに行きます♪
小節って、
時には映画よりも泣いてしまうことがありますね。
この短編集は、号泣まではいかないのです。
でも、しみじみと・・・じわーっと。
恋がしたくなります。