読書記録2021.08~2021.11

どっぷりとハマッてしまいました。
宮尾登美子さんの、自伝的小説の4部作。
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『櫂』 宮尾登美子 新潮文庫 544ページ

内容(「BOOK」データベースより)
高知の下町に生れ育った喜和は、十五の歳に渡世人・岩伍に嫁いだ。
芸妓紹介業を営み始めた夫は、商売にうちこみ家を顧みない。胸を病む長男と放縦な次男を抱え必死に生きる喜和。
やがて岩伍が娘義太夫に生ませた綾子に深い愛をそそぐのだが……。
大正から昭和戦前の高知を舞台に、強さと弱さを併せもつ女の哀切な半生を鮮烈に描き切る。
作者自らの生家をモデルに、太宰治賞を受賞した名作。


1985年に五社英雄監督・緒方拳と十朱幸代の主演により、同名で映画化されました。
映画は、私が20歳の時にミナミでレイトショーを、中学の同級生Yちゃんと観たのですが・・・
上映中に足元をネズミが走り回り、足を上げて、泣きながら観たという強烈な印象がありました。
(さらに上映終了後、トイレに行っていると、全ての照明を消され、恐怖の叫び声をあげて映画館を出ました)

映画の記憶が強烈でしたが、あらためて原作を読むと、グイグイ引き込まれてしまいました。
時々出てくる高知弁がいいです。

4部作になっていると知り、さっそく続きを。

『春燈』 宮尾登美子 新潮文庫 643ページ

内容(「BOOK」データベースより)
土佐の高知で芸妓娼妓紹介業を営む家に生まれ育ち、複雑な家庭事情のもと、多感な少女期を送る綾子。
育ての母喜和と実父岩伍の離縁という破局の中にあって、若くみずみずしい心は激しく葛藤し、やがて束の間の淡い青春を迎える……。
両親の側から生家の事情を克明に描いた名作『櫂』と、戦時下の満州での苦難の結婚生活に焦点を当てた『朱夏』を架橋する、著者渾身の自伝小説。


岩伍の娘・綾子(著者:宮尾登美子)の満6歳から、高女を出て代用教員になり、夫となる人に出会うまでが描かれています。
前作の『櫂』とかぶっているところもありますが、こちらは娘からの視点で書かれているのでよくわかり、飽きることなく読み進め、どんどん綾子にハマっていきました。

『朱夏』 宮尾登美子 新潮文庫 629ページ

内容(「BOOK」データベースより)
果してまだ、日本はあるのだろうか……?
同郷の土佐から入植した開拓団の子弟教育にあたる夫、生後まもない娘と共に、満州へ渡った綾子は十八歳。
わずか数カ月後、この地で敗戦を迎えることになろうとは。
昨日までの人間観・価値観は崩れ去り、一瞬にして暗転する運命、しのび寄る厳寒。苛酷無比の五百三十日を熟成の筆で描き切る。


これは壮絶でした
通勤電車の中で読むのですが、何度も涙。
生後2ヶ月の娘を連れて満州へ。
異国で1年以上も風呂に入れず、着替えもなく、無一文になり、食料もなくなり・・・
何度も命の危機にさらされながら、逞しく生き、よくぞ日本に帰れたものだと。
不自由なく甘やかされて育った綾子が、どんどん逞しさを増していくことに感動を覚えます。

『仁淀川』 宮尾登美子 新潮文庫 392ページ

内容(「BOOK」データベースより)
満州で敗戦を迎え、夫と幼い娘と共に必死に引揚げてきた二十歳の綾子は、故郷高知県の仁淀川のほとりにある夫の生家に身を落ち着ける。
農家の嫁として生活に疲れ果てて結核を発病した綾子に、さらに降りかかる最愛の母・喜和と父・岩伍の死。絶望の底で、せめて愛娘に文章を遺そうと思い立った綾子の胸に「書くことの熱い喜び」がほとばしる。
作家への遥かな道のりが、いま始まった――。


満州から引き揚げ、都会から農家へと嫁いだ先に戻り、そこでの生活が描かれています。
病みがちな自身と朝から晩まで田畑で働く元気な姑との葛藤、地方の農家にある風習などへの戸惑い、そして育ての母貴和との別れ・・・
これで最後なのがとても残念。
綾子が小説家として生きていくこの後も、小説にして欲しかった!

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