
自称ひきこもりの鳥井と、鳥井と過ごせる時間を増やすことを前提に職業を選択した僕(坂木)。
そんな二人が、ちょっとした事件を通じて、さまざまな愛を描いていく。
どんどん謎が解き明かされていくので、異色ミステリーとくくられているけれど、そこに流れているのは、優しさと愛。
指でカレーを食べるシーンが出てくる。
決して食べやすくないのに、味わいが違う。
すくいにくい米をまとめ、唇に近づける。
カレーをいじっている自分の唇が指に触れられ、その指に触れられる自分の感覚が分かれていく。。。
舌は味覚のためだけに存在するわけではなく、指は仕事のためだけに存在するわけではないのだ。
目は文字だけのだはなく。
耳は音楽のためだけではなく。
僕の身体は僕だけのものではなく。
誰かの愛は誰かのためだけではなく。
なんでブランドって、成金の感じがするんだろう?
そんな問いにも、鳥井は的確に答えている。
『金は絶対的なものさしだから、それで計れるものに慣れちまったんだろうな・・・。本当に大切なものは。そんなものさしじゃ絶対計れるものじゃねぇのに』
そして文庫版あとがきで、さらに著者が語ります。
『誰にだって汚い部分や負の感情はあります。けれどそういったものごとは、きっと無駄ではないと今の私は思います。鳥井の苦しみや坂木の涙が誰かを救うように、あなたの苦しみやあなたの涙もいつか誰かの扉を開く鍵になるはずだと信じているからです。』
読んだあと
『無理をしなくても・・・私は私のままでいいのかな』
そんなふうに感じて、気持ちが ふっと軽くなった一冊でした。
この記事へのコメント
TiTi
もう少し、本当に大事なものをごまかさずに生きていければいいですね。
のりたま
ちょっと最近、いろんなことに疲れています。
イライラしたり、落ち込んだり。
そんな自分がちょっとイヤになって
無理して明るくしてみたり、動いてみたり。
でも、負の感情も無駄ではない。
たまには止まったり、後退してもいいのかな。
そんなふうに感じました。
本当に大事なものを、見失わないで、大切にしていきたいと思います。